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資本主義終焉論を読む

榎原 均/斎藤隆雄/椿 邦彦(ルネサンス研究所・関西研究会運営委員)


 はじめに 当初は、若森章孝・植村邦彦著『壊れゆく資本主義をどう生きるか』(唯学書房、2017 年 11 月)を取りあげる予定であったが、オルタナティブな社会構想について担当している若 森の問題意識は、「21 世紀の社会民主主義」の解明であり、グレーバー『負債論』への言及 はあるが、基盤的コミュニズムについては触れておらず、負債がもたらす道徳への批判と債 務帳消の正当性ということしか述べていない。 それで予定を変更して、関西大学で 4 月 27 日に行われた酒井隆史を招いたシンポジウム の記録を素材にして、グレーバーが提起している基盤的コミュニズムについて報告したい。 シンポジウムは、酒井隆史がグレーバーの基盤的コミュニズムについて報告し、これに若手 の研究者二人がコメントする仕方で企画され、終了後『情況』誌に掲載しようと文字起こし し、植村さんにも書いてもらってシンポジウム全貌の雑誌掲載を提案していたが、大下編集 長が亡くなったこともあり、一時期宙に浮いていた。しかし、新規『情況』3 号目となる 2019 年冬号に掲載されることになり、酒井隆史の報告、浜田明範のコメント、北川恒太の感想、 植村邦彦のまとめ的論文をすでに入稿した。これらの論文はグレーバーの基礎的コミュニ ズム論を活かしてそれぞれがその展開を試みたものであり、若森説を取りあげるよりも、こ ちらの紹介の方が、本日の報告にはふさわしいと考える。


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