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『〈借金人間〉製造工場』を読む

     資本のカタストロフとどう闘うか

榎原均(『情況』No.2 2016年8ー9月号)

 廣瀬純による南欧の活動家の聞き取り、『資本の専制 奴隷の反逆』(航思社、2016年)は、危機に瀕したヨーロッパを論じたものだが、『〈借金人間〉製造工場』(作品社、2012年)の著者であるラッツァラートは、廣瀬のインタビューのなかで次のように語っている。  「新たな階級構成、新たな資本形態(金融資本、負債)、新たな戦争形態。これら三つの要素をしっかり把握した上でそのただなかでいかにして動くべきかを考えなければなりませんが、残念ながらぼくたちはそのずっと手前で足踏みし続けている。・・・ぼくたちにあるのは政治的不能であり、加えて理論的にも不能にとどまっている。」(『資本の専制 奴隷の反逆』、77頁)

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世界をかく乱する金融商品批判

斎藤隆雄(『情況』No.2 2016年8ー9月号)

21世紀は変動相場制下でのグローバル金融市場に対し巨額の資金を供給する特異な金融商品群によって支配されており、その争奪戦による過剰供給が恐慌を生み出し、更にその破綻のツケが国内経済へ波及することを防ごうとする中央銀行の信用貨幣の過剰供給という二重の過剰が席巻する世界となっている。その結果は家計からの更なる負債を捕獲するために、利子をゼロ近辺に低下させずにはおかない。もはや資 本は世界中の労働者の家計から、その労働の未来から収奪し続けるという構造からしか生き延びる道がないし、その構造そのものが現代資本主義の姿なのだ。

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グローバリズムと金融資本

奥村 岳志(『情況』2016年8・9月号 2016/10)

グローバリゼーションが社会を壊している。そういう中で争われているアメリカ大統領選の動向は注目に値する。サンダースを押し上げた若者たちの訴えはもちろん、トランプに自分たちの気持ちを代弁させている人びとの心情のいずれも、グローバリズムに対する怨嗟と怒りなのだ。そして若者たちは「巨大金融資本こそ諸悪の根源」と告発している。金融資本―この問題を今一度つかみ直す必要がある。

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国家、市場経済、グローバリゼーション

椿邦彦(『情況』No.2 2016年8ー9月号)

 イギリスは6月23日に実施された国民投票でEUからの離脱を決定した。アメリカでは七月一九日の共和党大会において、過激な移民排斥政策をかかげるドナルド・トランプを大統領候補に指名した。わずか1カ月足らずのうちに起きたこの二つの「事件」は世界に衝撃を走らせた。

 アメリカとイギリスは、第2次大戦後の資本主義世界体制を構築した二大国である。また今日の新自由主義グローバリゼーションを推進してきたのもアメリカとイギリスである。この新旧の覇権国のなかで、グローバリゼーションに背を向け、「自国第一主義」のスローガンを支持する国民の声が他を圧倒し始めた。

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