2019
研究会の記録

れいわ現象~左派ポピュリズムの登場?
伊藤公雄(京都大学名誉教授/社会学)
「政治的リベラリズム」を防衛・発展させ、「経済的デモクラシー(資本主義批判)の徹底をめざし、「現実」に依拠した運動の構築に向けて〜(左右の)ポピュリズムを超えて〜
ポピュリズムというのは、一見新しいイメージで登場する。われわれも政治スタイルの新しさの表現が問われるのである。同時に言葉の問題も考えなければならない。状況を的確に表現し、共通の課題を提示するための新しい言葉を作っていかないと、今のこの政治状況には対抗できないのだ。現在の状況を突破しうる、新しい「政治スタイル」と「ことば」の創出とそれらの共有が問われている。
中村勝己(中央大学ほか兼任講師/政治学)
ポピュリズム現象について考える――最近のイタリアの議論から
下からの直接行動による抵抗闘争だけでは、台頭する右翼ポピュリズムに対抗するには全く不十分である。ポピュリズムを生みだしている市民社会の解体状況と向き合って、中間団体や共同体の創造的な再建を目指すべきであろう。それはあくまでも創造的な再建である。これまであったあるがままの日本の共同体を再建すればいいということではまったくない。そのようなものは天皇制に結局回収されてしまうだろう。イタリアのマルクス主義革命家アントニオ・グラムシが提起した〈陣地戦〉という概念を、「市民社会=中間団体の創造的再建」という意味内容をこめて再定義することで、21世紀の新自由主義レジームの下での「反転攻勢」を展望する手がかりになるのではないだろうか。