後藤 元/榎原 均/新開純也
経済的パラダイムの変遷は量の変化に還元できない。量的な指標は、あるパラダイム から別のパラダイムへの進展における質的な変容をも、またそれぞれのパラダイムの 文脈における経済的な諸部門間の階層化をも、捉えることができない。 工業が支配するパラダイムにおいて、農業は単に量的に(従事する労働者の比率に おいても、生産される全価値の中の割合においても)衰退しただけではなく、農業自 体が変容した。農業が工業の支配下に置かれるようになったとき、量的に見れば未だ 農業が優勢であっても、それは工業の社会的、財政的圧力に服従するようになったの であり、しかも農業生産そのものが工業化されたのである。 農業が工業として近代化したとき、農園は次第に工場となり、工場の規律、技術、 賃金関係、等々の全てを備えるものとなった。農業は工業として近代化された。より 一般的に言えば、社会そのものが徐々に工業化されていき、人間関係や人間の本性を も変容させるほどになっていったのである。社会は工場となった。
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