非物質的労働論の提起したもの(2)価値の生産をめぐって

報告 後藤 元(ルネサンス研究所・関西研究会運営委員)


  20 世紀末の数十年間に、工業労働者はその主導権を失い、代わりに主導権を握ったのは、「非物質 的労働」だった。非物質的労働とは、知識や情報、コミュニケーション、関係性、情緒的反応とい った非物質的な生産物を創りだす労働である。中略。まず最初に、非物質的労働には二つの基本的 な形態があるという点を押さえておこう。第一の形態は、問題解決や象徴的・分析的な作業、そし て言語的表現といった、主として知的ないしは言語的な労働を示す。この種の非物質的労働はアイ ディアやシンボル、コード、テクスト、言語的形象、イメージその他の生産物を生み出す。 非物質的生産のもう一つの主要な形態は、「情動労働」と私たちが呼ぶものである。心的現象であ る感情とは異なり、情動とは精神と身体の両方に等しく関連する。喜びや悲しみといった情動は、 一定の思考の様態と一定の身体の状態をともに表現することで、人間という有機体全体の現在の生 の状態を明らかにするのだ。したがって情動労働とは、安心感や幸福感、満足、興奮、情熱といっ た情動を生み出したり操作したりする労働を指す。具体的には弁護士補助員やフライトアテンダン ト、ファーストフード店の店員(笑顔でのサービス)といった仕事に、情動労働を見出すことがで きる。少なくとも支配諸国において情動労働の重要性が増していることは、たとえば雇用者が被雇 用者に対して、教育や好ましい態度、性格、「向社会的」行動を主要なスキルとして強調し、それら を身につけるよう要求する傾向に表れている。好ましい態度と社会的なスキルを身につけた労働者 とは、情動労働に熟達した労働者と同義なのである。


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