派遣労働について

椿 邦彦(ルネサンス研究所・関西研究会運営委員)


 85 年派遣法は、人材派遣業の伸長によって「直接雇用の原則」が、脅かされているの に対して、これを規制するのではなく、「労働者派遣関係」を法認することによって、間 接雇用の拡大を促すものであった。 これは、「雇用の流動化」(終身雇用制の解体=有期雇用への転換)や直接雇用に伴う「雇 用責任」、「使用者責任」の回避を望む企業側の要求と合致するものであった。 また有料職業紹介の解禁と人材派遣業の拡大は臨調・行革路線の一環として、職安行政 の縮小―「雇用対策の民営化」(中間労働市場論)を図ろうとしていた政府の施策とも合 致していた。 そのため、85 年派遣法の専門 16 業種の中には、ビル・駐車場管理やファイリングなど の単純作業が入れられ、後のネガティブリスト方式への布石が打たれていた。 派遣法の大きな転換は、99 年、03 年改正による対象業務のネガティブリスト方式の採 用と製造業への派遣の解禁である。これによってグッドウィルやフルキャストなどに代表 されるような悪質な派遣会社が急伸長する。このようにして低賃金労働を大量に生みだす ことで日本の大企業は、2002 年から 2008 年まで「いざなぎ景気超え」とよばれる景気拡 大による空前の利益を手にした。 しかしそれもリーマンショックによって破綻を来す。その犠牲が集中したのが非正規雇 用労働者、派遣労働者である。このとき行われた大量の「派遣切り」が社会問題化し、そ れまで緩和され続けてきた労働者派遣制度の見直しを求める世論が高まった。 08 年に野党 3 党によって作成された派遣法改正案は、製造業派遣の禁止、日雇い派遣 の禁止、派遣先企業の罰則や直接みなし雇用制度など画期的な内容をもっていたが、09 年に誕生した民主党政権下で行われた 12 年改正では、その核心部分のほとんどが骨抜き にされた。 12 年末の安倍政権の登場は、「派遣切り」以降、なりを潜めていた悪質・違法な派遣労 働を再び登場させる結果となった。たしかに数字だけを見れば、派遣労働者が非正規雇用 労働者全体に対して占めるパーセンテージは 6 %程度すぎない。しかし、その背景では偽 装請負や二重派遣などの違法行為などが横行しており、統計上の数字には表れない悪影響 を日本の労働環境体に対して及ぼしているのである。


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