菅 孝行/中村勝己/椿 邦彦
陣地戦・分子革命・左翼ポピュリズム? 中村 勝己
世界を変える陣地戦は可能か 菅 孝行
「左翼の再生」について考える 椿 邦彦
2011年、世界各地で沸き起こった民衆の反乱は〝新たな革命〟の登場を告げ知らせるものであった。アラブの春、スペイン・マドリードのプエルタ・デル・ソル占拠闘争、ニューヨーク・ウォールストリート占拠闘争などが切り拓いてみせた新たな地平は、それまでの左翼の既成概念を覆してしまうものであった。
日本においても2011年3月11日の福島第一原発事故をきっかけとして、新たな民衆の運動が沸き起こった。「3・11」で人びとが目にしたものは何であったのか。それは、原発事故にいたる経緯とその後の日本政府と東京電力をはじめとする電力資本の「人の命よりも経済効率を優先する」というあまりにも非人間的な姿であった。この姿に多くの人びとが抱いた道義的な憤りが爆発的な再稼働反対運動へと拡がっていった。「3・11」で人びとが抱いた憤りは、資本主義にたいする根底的な批判の芽生えであった。
しかしその運動は現在、リベラリズムの旗の下にその大勢が集約されている。それは2015年の戦争法反対運動以降、運動の重心が「市民と野党の共闘」へと移っていく中では必然であったと言えるだろう。そして、2017年10月総選挙における立憲民主党の「予想外の躍進」によってその傾向は確定的なものとなった。資本主義に対する根底的批判を内包しながら登場した運動が、資本主義のイデオロギー的支柱である立憲主義とリベラリズムに集約されるという逆説的な事態が私たちの目の前で進行している。かつて左翼が掲げてきた「資本主義にかわる新たな世界を作り出す」という理想、すなわち社会主義や共産主義が提示した未来像は、いまやほとんどの人びとにとってその政治的な選択肢の中に入っていない。私たちルネサンス研究所は今述べた冷厳な事実から目をそらすことなく、現実と真正面から格闘するすべての人びとに対して、大胆に「左翼の再生」についての議論を呼びかけたい。(「はじめに」より)
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